撮影準備を進めるなかで、ブーツ選びに悩んだことをお話ししましたが、それ以上に時間かかったのが銃でした。
ひとつの衣装に対して、これほど多くの候補が浮かんでは消え、また出てきてはどっか行く、というようなことはなかったです。
いつもなら、わたしの銃コレクションの中から、服のイメージに合うものを選んでハイ終わり、でした。
特に、これまで撮影に取り上げてこなかったり、撮ったとしてもすっごい枚数が少なかったり、不遇な銃を優先してね。つまり、すっごい小さな塊が選択の対象だったと。ところがぎっちょん。今回は衣装に似合う銃も新調しようと思いまして。
軍服ロリのコーディネイトの方針は、”WWU終結以前の古風でかっちりした制服”であり、群がる敵を一掃する戦闘力を持つキャラを想定したので、これらに適合する銃を選ぶべしと考えたのですが、どうにも手持ちの銃にはビシッとくるものが見当たらなくてね。
満を持してのロリィタ服であり、貴重な撮影機会。ここは手を抜けないぜ!とヤフオクを漁ることにしたのです(やる気は無限でも予算は有限)。
BB弾を発射する銃だけでなく、弾丸の出ないモデルガンまで、できるだけ裾野を広げて検索した結果、旧ドイツ軍のMP40/MP41、ソ連のPPSh-41、イギリスのステンMkU、アメリカのS&W M76、そして旧日本軍の百式機関短銃をピックアップ。一つの商品に対して幾つもの出品があるので、痛み具合や付属品の有無などをチェックしつつ、お値段が手頃なものをウォッチリストに加えていきました。
本格的に悩んだのはここから。
ちょっと良いなと思うものがあっても、時間が経てばもっと好条件のが出てくるかも.....と二の足踏みまくり。ヤフオクで検索する度に、昨日はこの商品、今日はあの商品、明日はそっちの商品が第一候補になるみたいな。
わたしはいつ何を決め手にして、GETするべき物を決めればいいのだろう???






それに、どこか根源的な、心のどこかでモヤモヤするものが蠢いていてさ。
それが何者か、自分の気持ちに正直に向き合ってみると、『いま候補に挙げている銃は好みのデザインではない』という結論に至ったのです。
わたしは銃に対する博愛主義者であって、あらゆる銃を一度は握ってみたいと常に夢想している人間なのですが、とは言え、やっぱわたし基準でカッコイイと感じるものから優先ね♥とも思っております。
MP40なんて歴史的なサブマシンガンであり、知名度も抜群。一度は所有してみたい銃ではあるものの、他の様々な銃を押しのけてまで欲しいか?と自問すれば、そこまでではないな〜と。
主観的な好みというのは時を経れば変わるものでしょうけど、今のわたし的好きなデザイン(長物編)というのは、
@大き過ぎず小さ過ぎないもの(短めの銃身、伸縮/折り畳みストック装備なもの)
A「ワイルドだろぉ」という言葉が似合うもの(頑健、無骨、ゴツゴツさを持っているもの)
B現代的ではあるものの、ポリマーを多様した未来銃とまではいかないもの
なんですよねえ。
どうですか、お客さん。候補に挙げた銃達と、わたしの好みのズレがわかりました?わかるでしょ?120%わかるでしょ?






服については、一度撮影すればハイお終い、という結果になることが多いです。
永いあいだ箪笥の肥やしであり続けて、劣化により着ることが出来なくなったり、断捨離で処分したり。もちろん、勿体無いとは思うのですが、と言ってもしようがないべ、という状況でもあったり。
隠れ女装さんなので、お気に入りの服を部屋に飾って愛でることも出来ないですし。
なんともコスパの悪い趣味だと自嘲しております。
しかしですよ、銃はそこまで割り切れない。単品では概ね衣装よりも高価で、使い捨てるには抵抗感ありまくり。
銃であれば、何気に机の上に置いておいても、白い目で見られることはあっても、人生終わってしまうほどの変態扱いはされないっすよね、きっと。でも、在宅勤務しているオッサンの傍に、ブラジャーとTバックが吊るされていたらどう思います?
「オレの心は女なんだーッ!」と叫んでみても、許してくれる世界と決して許してくれない世界があるのですよ。
同じ金を出すなら、やっぱり自分の好みに合った銃を買い、たまには構えたり、マガジン抜き差ししたり、チャージングハンドルをガチャガチャさせたい。






心機一転!ヤフオクの検索結果をリセットして、選定し直しました。
で、最終的にわたしのハートを掴んだのが写真の銃。東京マルイ社の「H&K G3 SAS HC」です。
キャラ設定優先から銃の好み優先に方針転換したとは言え、衣装との相性を綺麗さっぱり忘れた訳じゃないですよ。
制帽/手袋/ブーツや、その他小物が醸し出す雰囲気から、独逸または東欧のどこかの国にゆかりのあるモデルがいいだろうと。且つ前述した好み@〜Bを満たすものは???ということで、行き着いたモデルです。
東京マルイの誇る電動ガンシリーズの一品ではあるものの、M16系に比べるとマイナーな為か、状態の良いものを比較的お安くGETすることができました^^






「H&K G3 SAS HC」の元になった実銃は、英国のMC51。その素性を時系列を遡って書いてみると、
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英国のFRオーディナンス社が、自国の特殊部隊SAS向けに、ドイツH&K社のG3を短機関銃サイズにまで小型化したMC51を作った。銃が公になったのは1992年のこと。
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西ドイツ軍が、スペインの自動小銃を原型としたG3を正式採用(1959年)。H&K社とラインメタル社に生産を委託。その後、ラインメタル社は生産から撤退。H&K社が独占的な生産・販売権を得ることになった。
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WWU終結後、ドイツのモーゼル社にて突撃銃の開発に携わっていたルートヴィヒ・フォルグリムラ−さんをはじめとする技術者達がスペインに渡り、特殊素材技術研究センター(CETME)にて自動小銃「セトメ・ライフル」を開発。スペイン軍に正式採用された。
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なかなか興味を引かれる流れでしょ。
あのゲルマン大科学工業国の超絶精密な小銃が、スーパーラテンな国の生まれだったとは。
フォルグリムラーさんのことは、G3のことを調べている最中に知ったのですが、枢軸側の技術者が敗戦により他国へ渡り、そこで何事かを成すというケースがここにもあったのかと、感慨深いものがありました。
わたしが知っている範囲では、
クルト・タンク :戦闘機Fw190、Ta152などの設計者。戦後、インドで超音速戦闘機HF-24マルートの開発に携わった。
フォン・ブラウン :弾道ミサイル「V2」開発メンバーの一人。戦後、アメリカに亡命。NASAのアポロ計画を指導した。
志田一平 :旧日本海軍の造船士官。家族をソ連に人質に取られたため同国に渡り、艦船建造に従事。後に技術大将。
基準排水量218,000トン、25インチ主砲9門という史上最大最強の戦艦「トハチェフスキー」を世に送り出した。
とか。まさに技術に生き、技術に殉じた人達.....。






あ〜若干一名、フィクションの人が混じってますからね。お遊びですから。横山信義さんの架空戦記の登場人物ですからね。

話し変わって、G3の使用弾は7.62×51mmNATO弾。名前の通り、NATOのみんなで使いましょうと1950年代に定められました。G3以外の使用例としては、アメリカのM14やベルギーのFALが有名どころ。更に、小銃開発国ではNATOに加盟していなくてもこの弾を使うモデルを作ったりしてます。標準的な規格に則っていれば、輸出・輸入するにも補給するにもメリット大きいですしね。我が陸上自衛隊の64式小銃も、在日米軍との弾薬共用を考慮して、この弾を使ってるんですよ。
ただ、7.62×51mmNATO弾(フルネームで入力するのめんどいので、以降7.62mm弾とする)は、バリバリ連射をする自動小銃にとって威力過剰だったようで、国によってはフルオート射撃機能を外したり、日本では7.62mm弾そのままの常装弾と装薬を減らした減装弾を使い分けたりしてました。
7.62mm弾がNATO標準になった経緯を見ると、アメリカの一面、つまりジャイアン振りがよーくわかります。加盟各国、特にイギリスは相当反発したようですけど、アメリカが押し切ったと。当時の西ドイツも内心、「ちぇ、パワー馬鹿が」なんて思っていたんじゃないかなあ。
一方、その弾を撃ち出し装填する作動システムは、どんな造りにしようが国ごとの勝手で、G3では旧ドイツ軍の遺産とも言える「ローラー遅延式ブローバック機構」を用いました。
作動システムってさ、反動利用式とかガス圧利用式とか、更に細かくシンプルブローバックとかディレードブローバックとか、ロングストロークなんたらとかショートなんたらとか、ネット記事を斜め読みするだけでムキーッてなりませんか。
わたしはなります。何書いとるんじゃー!?って。小難しい単語眺めても、どこのどんな部品がどう動くのかさっぱり想像できませんや。
識者の評価を受け売りすると、”ローラー遅延式ブローバック機構は、反動の抑制に優れている。また、大きな設計変更せずとも様々な威力の弾丸に対応できる”なのだそうです。
以上、G3がどんな銃かお勉強になりました?
G3の生産・販売権を一手に握ったH&K社は、その特徴を活かして狙撃銃化したり、使用弾の口径を変えたり、軽機関銃や短機関銃を生んだり、ものすっごいファミリー化を果たして世界中に売り込んだのでした。
「神様、仏様、G3様」ですよねえ。






そんな名銃を魔改造したのがイギリス。英軍特殊部隊であるSASの要請を受けて、FRオーディナンス社がG3をカスタマイズしました。
イギリスってさ、突拍子もないというか、どうしたらそんな発想できるの!?という兵器を輩出してきたイメージがあります。上手くいけばエポックメイキングと讃えられるものの、とんでも兵器として一部の変態マニアのみに愛されるはめになることもある、というね。G3の改造は後者。
コンパクト&ハイパワーを追求して、G3を切り詰めて切り詰めてサブマシンガンサイズにまで小型化したと。銃の小型・軽量化は時代の趨勢であり、特殊部隊としては真っ当な要求だったと思うのですが、それに7.62mm弾を使っちゃうとは。1980〜1990年代であれば、もっと小型化に適した5.56mm口径弾も普及していたであろうに。
漢だなあ、イギリス。
「MC51」の名前で特殊部隊に供給されたものの、あまりに凄まじいマズルフラッシュ(発射炎)と強烈すぎる反動により、部隊員からの評価は散々だったようです。
わたしが100倍界王拳を使っても乗り越えられないような、厳しい訓練で鍛えられている特殊部隊員がブーたれるって、いったいどれほどの酷さだと思います?
アメリカのガンスミスがMC51と同様にG3を切り詰めた銃があります。民間用で「HK51」というの。「H&K社関係ないのに紛らわしいことするなあ、アメリカ人は」なんて思ったりしましたけど、それはさておき、HK51の射撃シーンがある動画がYouTubeに挙がっています。”HK51 Gun”とか”HK51 Shoot”で検索すると、幾つかの動画が出てくる筈。
まあ、度肝抜かれましたわ。どう表現すればいいかなあ。
わたしが観た映画の中で一番迫力あった発砲シーンは、「プレデター」でシュワちゃんとその仲間達が、逃げるプレデター(透明化してるので見えない)に対して一斉射撃するところ。とにかく物凄い物量、というか火薬量。いるかいないか分からない敵に盲撃ちも甚だし過ぎると思いつつ、そういうシュワちゃん映画の馬鹿っぽさが大好きなんだけどね。
そのシーンで使われてたのは、M16×2,MP5×2,連発式グレネードランチャー×1,ショットガン×1,ミニガン×1.
これらをもし全部HK51に置き換えたならば、映画館の中は真昼のように輝き、スピーカーのコーンははじけ飛んで、お客は目と耳を押さえてのた打ち回る.....となります。
結局、MC51はろくに活躍することもなく、配備されてから数年で、5.56mm弾の後継銃に置き換えられたのですって。






実銃の解説を頭に入れて、東京マルイの商品名「H&K G3 SAS HC」を眺めてみれば、なんか違和感ありますよね。
素直に書くなら「FRオーディナンス MC51」とすべきではないのかい、と。
でもまあ、そこは日本のトイガンメーカーの思惑も理解できます。
H&K社とFRオーディナンス社とでは、国内での知名度が天と地ほども違いますもん。H&K社はMC51の開発には関わっていないので、「H&K MC51」と名乗るわけにはいかない。でもやっぱH&Kの名前は使いたい。
SASは世界各国の特殊部隊の手本となったほどの組織の名前であり、トイガンファンであれば、その表記に覚えがある人もそれなりの数が見込める。で、売れそうな名前をひねくり出した。
マルイの商品名をわたし的に補完すると、『H&K(社の)G3(をベースにしたFRオーディナンス社の)SAS(向けMC51)』となるんですよね。「有名メーカーの優秀銃っぽいでしょ。買ってくださいよ、お客さん」と読み替えることが可能です。
HCというのはHicycle Customの略であって、電動ガンオリジナルの表記なので、どうでもいいです(^^)

爆音と爆炎をまき散らしながら戦場を駆け巡る軍服ロリィな女性指揮官(のように見えるおっさん)。中二病を患っている変態さんは目を瞑って彼女の活躍を脳裏に描いてくださいませ。

2024.3.15