わたしが持っているちっこくて黒いのは、イングラムM11ってやつ。
1960年代末に開発されたサブ・マシンガンです。






ひとつの銃が開発されてから、生産や販売が終了し、世の多くの人の記憶から消えてしまうまでを銃の一生とするならば、生まれた我家(銃器メーカー)でずっと面倒を見てくれて、多数の兄弟(量産品)がいて、それなりのキャリア(採用実績)を得るという幸せな人生を歩むモデルもあれば、それらとは縁のない流浪の人生を歩むモデルもあります。
イングラムM11は残念ながら後者。
そもそもイングラムってメーカー名じゃないんですよね。ゴードン・B・イングラムという設計者の名前です。
ゴードンさんが優秀で有名だから通り名になっているのも理由の一つですが、M11を扱うメーカーが転々として、どれかに決められないのも確か。ネット情報を整理すると、
『アーキアーガ・アームズ社に在籍していたゴードンさんが、1964年に小型&シンプルさを重視した短機関銃M10を設計する。1969年にゴードンさんはSIONICS社に移籍。M10の開発・生産も同社へ移行。
同年、M10の使用弾を.380ACP弾に変えて、更に小型化を図ったM11が開発される。
翌年、社名がミリタリー・アーマーメント・コーポレーション(MAC)社に変わる。1975年にMAC社が倒産。RPBインダストリーズ社がM11の生産を引き継ぐも、1982年に倒産。
M11の製造権は、SWD社やコブライ社が取得し、バリエーションモデルも発売しつつ現在に至る』
とのこと。生まれる前から親が離婚を経験していて、生まれた後も家族が離婚や死別を繰り返したような。
不憫。






銃自体は特徴が豊富で、優れた素質を持っているのですけどね。
・とにかく小型。伸縮式のストックを畳んだ状態だと全長248mm.これは大型の自動拳銃くらいのサイズ。
・オープンボルト方式の単純なブローバック機構。部品の多くは、スチール板をプレス加工した成型品。生産性に優れ、作動不良が発生し難く、頑丈さも十分。もちろんコストも抑えられる。
・高い連射性能。毎分1200発/秒。
・連射時の安定性を確保する為、大型のサプレッサーを用意。銃口には装着用のネジが切られている。
美味い安い早いという牛丼のような製品じゃありませんか。
でもさ、ちょっとワケありで、世間でのイメージはいまいちなんじゃないかな〜ってね。






仁王立ち。
この写真のポイントは、首から脚までが、ゆるーくS字形を描いていることですね。
逆S字だったり、IとかJだったらダメ。OとかXもダメ。
でも、Ю字とかЙ字だと逆に見てみたい気がしないでもないのが不思議。






閑話休題。
M11の世間的イメージがいまいちな理由について。
機構が簡単過ぎた為、違法改造されて犯罪に多用されたことが原因。アメリカでは、銃を一般販売する場合、フルオート出来ないようにして売るのがお約束。でも、M11の場合、ちょちょいと手を加えるとバリバリ連射可能になってしまったと。で、製造元がダーティメーカーの汚名を被ってしまい、市場から締め出されたのだとか。
牛丼だと違法に改造(調理)されても、客が不味いもの食わされて腹こわす程度で済みますが、鉄砲の場合、銃弾を喰らうとお腹ん中がぐっちょんぐっちょんになってしまいますからね。
その後、改造し難いよう改良されたM11が再発売されたものの、一度付いたイメージを払拭することもまた難しいですよね。ねえ、奥さん。






映画でも犯罪者やテロリストなど、悪役が使ってるイメージがあります。
最近観た映画では「ノーカントリー」に一瞬だけ映ってました。死んだ悪人のそばに転がってる役で。
一方、同じ映画に出ていた超有名なドイツの短機関銃は、主人公にしっかり握られて、出演時間も多め。
うーん、やっぱ不憫だ。

2008.7.9