中世趣味が関係するゴスロリには、やはり古い銃を合わせましょう。今回の得物はルガーP08。
銃好きのかたならよーくご存じ、WWTからWWUにかけてドイツ軍で使われた自動式拳銃です。
一番の特徴は、トグルアクションと呼ばれる独特のショートリコイル機構(トグルジョイント式)を持つこと。
マニアックな話しても面白くないので砕いて書けば、
【今どきのオートマチックピストル】
弾を発射すると、銃の上半分を占める部品がビョーンと後ろに下がって、次の弾を発射する準備をする。
【ルガーP08】
弾を発射すると、銃の上面から金属の部品がシャコンと飛び出して、次の弾を発射する準備をする。
ルガーP08の機構は、その動きから尺取虫と呼ばれていたそうです。イメージ出来ます?
トグルアクションを再現したガスガンを撃ってみると、何とも不思議な感覚を味わえますよ。






ルガーP08の原型完成は1902年。トグルアクションのアイデア自体はもっと古くて、1880年代末には同機構を用いた自動式拳銃が作られています。
この時期は自動式拳銃の黎明期で、P08とほぼ同時期にモーゼルC96、コルトM1911なんていう魅力的な銃も登場してたりしてね。M1911のショートリコイル機構(ティルトバレル式)は、現代では超メジャー。構造がシンプルで小型化し易かったのが成功の理由。同じ機構を持つ様々な銃が設計され、大量生産され、がしがし使われてきました。
一方、トグルアクションは構造が複雑で、高い工作精度が必要。P08は軍用銃として繊細過ぎるという評価があったようです。1945年をもって、P08は独特の機構とともに歴史的役割を終えてます。
ゴスロリの冷厳さ、儚さ、頽廃的である様は、そういうルガーP08に相通じると思うのですよねえ。






銃本体は過去の物になってしまいましたが、P08のため同時期に開発された弾薬は今でも現役です。
9mm×19パラベラム弾。自動式拳銃/短機関銃用の実包として、世界中で最も広く使われている実包。
百年も前のマスプロ工業製品が未だに現役って、なんかすごくね?
それが人殺し目的の道具ってのがアレなんですけど、わたし的視点すなわち”一メーカーの一技術者”という立場から見れば、百年たっても使い続けられる物を生み出すということは、夢のまた夢的快挙であると思えます。

2007.9.22