「あなたのお名前は」
「Hiromiです」
「座り方がぎこちないですね。緊張していますか」
「いえ、慣れてないだけです」
「うちの会社を選んだ理由は何ですか」
「残業しなくて良さそうなので」
「あなたは会社で何が出来ますか」
「仕事をしてるふりが出来ます」
「声が低いって言われませんか」
「だって、男ですから」
「帰ってください」






「えー、不採用? なんで」
「うちはオカマさんはちょっと」
「偏見だー、偏見だー」
「そんなことないです」
「ええい、こうなったら、女の武器で」 ゴソゴソ(布団を敷く音)
「ヘイ、カモン」
「だから帰れって」






わたしがちっこい頃は、女の格好をしている男は十把一絡げにオカマと呼ばれていましたねえ。
女の服を着て、女言葉を使って気色悪い動きをするおっさん。というイメージが、世の多くの人々の認識であったかと。
時は流れ、社会人になって金銭的な自由度が増し、一人暮らしが始まり、ネット通販のことも知るようになって本格的に女装を始めた頃には、既にトランスセクシャル、トランスヴェンダー、トランスジェンダーという言葉がありました。ネットの海を漂っては、ちょくちょくお勉強しましたさ。
その後、女装子,女装家,女装レイヤー,男の娘などの用語に触れたり。最近は、オネエという人々を毎日テレビで見るようになったり。
どうなんでしょ、女装に対する世間様の受け取り方、というか表面的なものではなく、個々人が心の奥底で持つ本能的な好悪感は、本当に変わったのかなあ。






しかし、女装家ってなんだ、女装家って。ネット上で女装道なんて言葉を使っている人もいたな。
真意はともかく、字面だけ見ると、なんか女装に高尚で絶対的な価値を設けて、ストイックに女装のことを極めようとする求道者って感じ。
真意はわかりませんよ、真意は。あくまでわたしの想像です。
でもまあ、わたしには的には女装なんてそんな大層なものかと思っちゃいますね。
動機が不純なので、わたしの女装は完全に変態行為です。全然たいした人間ではないので、自分のことを表す場合は、「女装さん」で十分。
外国の人が日本人の個人名を書いたり呼んだりする時は、「○○-san」とするのが世界標準みたいになってるじゃあないですか。国内で女装している人を、「jyosso-san(ジョッソーサン/女装さん)」と表すのは、世界的なデファクトスタンダードだと言って良いんですよ、きっと。

2002.7.13